吉井 信公

四十八手を駆使して、変わり塗り一筋。

吉井漆器工房(大吉屋)よしいしっきこうぼう だいきちや 吉井 信公よしい のぶひろ(塗り師)

独自の技法を用い、仕掛け、銀蒔き、塗り重ねの色合い等、工夫、労力、日数をかけ乾燥させ研ぎ出して、始めて文様が見えてきます。幾度も摺り漆と磨きを繰り返し、研ぎだし漆器の完成品手にとって、見て、触れて、真の漆器のぬくもりを、感じて見ませんか。

吉井さんのこと

様々な色の漆を塗り重ね、唯一無二の世界観を表現する吉井さんは、1937年、会津若松市生まれ。
漆塗り職人であった父のもとに生まれましたが、家業は兄弟の誰かが継ぐだろうと、子どもの頃は、進学することを考えていました。
転機は中学3年生の時。お父さんが突然お亡くなりになり、吉井さんは急きょ、父親の友人であった職人さんのもとへ弟子入りすることになりました。
「当時は、食べていくために職人の道を選びました。私は長男だったので、当時は家族を養わなくてはいけないという思いで必死でした。」と吉井さんは当時のことを振り返ります。
それでも、吉井さんのお父さんが漆塗りの職人であったということは、吉井さんの体にしっかりと受け継がれていました。初めて漆塗りを経験する人のほとんどは、漆によって皮膚がかぶれるそうですが、吉井さんは、初めて漆塗りをした時もかぶれなかったそうです。
弟子入りしてからの吉井さんは、とにかく夢中で仕事に励んだと言います。夜勤などもよく行い、自宅に帰ってからも下仕事をしていたそうです。
それから約10年の修業期間を終え、現在、大吉屋2代目として意欲的な作品作りをされている吉井さん。伝統技術継承への貢献が認められ、平成20年には「瑞宝単光章」を授章しています。
「職人として作品を作り続ける間、一生自分の宝と思えるような作品を1つでも作りたい」吉井さんは、その目標に向かい挑戦しています。

吉井さんのこと 吉井さんのこと

吉井さんのうつわ

漆塗りには、漆を何層も塗り、塗った漆を削ることで模様を出す“変わり塗り(研ぎ出し)”と呼ばれる技法があります。研ぎ出しの中でも、“金虫食い(きんむしくい)”と呼ばれる技法は、会津ならではの伝統の技です。
「“金虫食い(きんむしくい)”と言えば、吉井さん。」周囲の人からそう言われる由縁は、独自の研ぎ出しで、木製漆器一筋60年余のなせる技があるからです。
一見似たような模様の金虫食いであっても、吉井さんは、自分の作った作品かどうかを、その模様から区別出来るそうです。
「自分の作った作品は、どこにあっても分かります。やっぱり、模様などに違いが出る物なんです。自分の作品は下請けなどには任せず、すべて自分でやっています。作り手として、そこは譲れない部分です。だからこそ、すべての工程で、納得いくものが出来た時の嬉しさは格別です。」と作品へのこだわりを話す吉井さん。
金虫食いは48もの工程があるため、すべての工程で納得のいく物を作ることは、想像以上に難しいもの。始めの方の工程が上手く出来たとしても、そのあとの工程で失敗すれば、また一からやり直し。
特に、最後に模様を浮かび上がらせる「研ぎ」の工程では、サンドペーパーのちょっとした当たり具合でも塗りを研ぎ破ってしまうため、加減を調整するのが難しいそうで、何度も繰り返して、体に感覚として身につけたそうです。
さらに、吉井さんは、表面を滑らかにするために、テマヒマをかけてでも、目の細かいサンドペーパーで研ぎ出しを行っています。吉井さんの手には、そのこだわりを示すように、研ぎ出しの際に出来た“たこ”がくっきりと浮き出ています。まさに、長年職人としての道を歩んできた勲章のようです。
そんな吉井さんの商品は、汁椀・茶托・皿・盆・膳・箸などを主力とし、普段使いの器から、普通の人はやらないような色の重ね方にも挑戦し続けています。
オリジナリティ溢れる吉井さんの工房内ギャラリーには、見ているだけで楽しくなる、そんな器で溢れています。

吉井さんのうつわ 吉井さんのうつわ

吉井さんの工房

吉井さんの作業場は、ご自宅の中にあります。作ることは人生そのもの、という吉井さんの生活が伝わってくるような場所です。
工房にある、漆を乾燥させるための「風呂」と呼ばれる棚には、漆の試し塗りの跡が無数に残っており、長年、塗り師としてお仕事なされてきた様子を伺うことができます。
作業部屋は2つあり、漆塗りを行う部屋と下地や研ぎをする部屋に分かれています。漆塗りを行う部屋は、神聖な場所。その作業中には、家族でも入れないという場所ですので、こちらは非公開。
お客様に見ていただけるのは、下地や研ぎの作業をする部屋です。
そこには、様々な道具や材料が並び、いつも吉井さんは、訪れたお客様に「これはどんな風に使う道具でしょう?」とクイズを出されたり、実際に現物を触らせてくれたりします。
一番盛り上がるのは、金虫喰い塗りの20個ほどの工程見本を順番に並べてみましょう、というクイズ。思いもよらない結果に、驚くこと間違いなし。是非あなたもチャレンジしてみてください。

吉井さんの工房 吉井さんの工房

テマヒマうつわ旅だけの制作体験

あっと驚く研ぎ出し体験!マイ箸を作ろう!

料金:2,000円/1人、所要時間:1時間30分

工房の中で吉井さんが直接指導する箸づくり体験。
会津伝統の技である「金虫食い」が施された箸、その模様が一気に浮き出る最後の工程である「研ぎ出し」をしていただきます。
最初は漆の黒一色だった箸が、あなたが研ぐことによって、表情が見る見る変わっていきます。
出来上がった箸は、当日お持ち帰りいただけます。

漆のかぶれやすさは個人差によります。
作業に際しては、漆に直接触れないように前掛けとゴム製手袋を準備いたしますが、お肌の弱い方や漆かぶれが心配な方は、参加をご遠慮ください。

吉井漆器工房(大吉屋)

吉井漆器工房(大吉屋)

所在地:会津若松市飯盛二丁目十一番四号
訪問可能時間:9:00~17:00

工房でできること:

  • 工房見学
  • お買いもの
  • 制作体験
  • オーダーメイド
  • 漆器修理

紹介している工房は、お客様の受け入れを常時しているところばかりではありません。
そのため、各工房に直接連絡されることはお避けいただき、必ずこのページからお問い合わせ・お申し込みいただきますよう、お願い致します。

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