テマヒマうつわ旅:東北オープンアカデミー特別編 〜森から生まれる器、食の源流をめぐる旅〜

投稿日:2015年5月4日(月) カテゴリ:日々のアテンドから

先週4月24日(金)〜26日(日)の3日間に渡り、「東北オープンアカデミー」との共同開催により、「テマヒマうつわ旅:東北オープンアカデミー特別編 〜森から生まれる器、食の源流をめぐる旅〜」を開催しました。

漆器から見る会津の食文化とこれからの伝統産業の可能性を探る合宿形式でのフィールドワークとなった3日間の模様をダイジェストで(と言ってもコンテンツたっぷりだったので少々長いですが^^;)ご紹介します。

<開催主旨>
森から生まれるうつわ、漆器。木地の元になる地元産木材。漆の原料を採るためのウルシノキを育てる畑。そして、木地・塗り・蒔絵という分業化された工程。器ができるまでの源流を「体験」を通して辿りながら、そこに隠された職人さんたちのテマヒマを学びます。さらに、薬用人参を始めとした会津の食を支える若手農業家さんの新たな挑戦にも触れ、「食べること」の意味をもう一度考えていきます。
参加者の皆さんには、今日から「作る人と使う人・食べる人のお互いの顔が見える関係を作り、新しい市場を作っていく取り組み」の仲間になっていただき、みんなで更なるアクションを考えていきます。

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<Day1>
プログラムのスタートは、木地師・三浦圭一さんの工房から。木地師さんは、木を挽くカンナも自分で作ります。職人さんによって、微妙に刃先も違います。三浦さん曰く「木地師は鍛冶屋も出来ないと、一人前にはなれない。」道具づくりも職人さんの大事な仕事です。
三浦圭一さん

三浦さんが使う木地は、荒挽きしてから10年以上自然乾燥させた木を使用します。儲かることだけを考えたら、こんな方法を続けることは選びませんが、長く使っても狂わない器を作ろうと思ったら、欠かせないテマヒマです。そして、今三浦さんが荒挽きしている木地は、三浦さん本人よりも、そのほとんどを息子さんが使っていくのでしょう。漆器は、使うのも(塗り直しをして)世代を超えて受け継いでいけるうつわですが、作る方も世代を超えていくうつわです。
三浦木工所

初日の夜は、「会津職人の会」さんの懇親会に合流し、会津特産の御種人参(薬用人参)を使った薬膳料理と漆器のお猪口での地酒を楽しみました。漆器職人さんたちから様々なお話を聞かせていただき、参加者の皆さんも会津漆器産業に対する理解がさらに進みました。
薬膳古川

<Day2>
1日目に宿泊したのは、会津漆器を使ってくださっている料理旅館「田事(たごと)」さんでした。2日目も元気にスタートです!
田事

午前中は、喜多方の清水薬草・清水琢さんから、会津の伝統野菜である御種人参(薬用人参)の興隆と衰退、そしてこれからの挑戦のお話しをお聞きしました。漆器産業にも通じる話が沢山。そして、生産者から消費者に直接野菜を届けるチャレンジをしている渡部農園の渡部佳菜子さんも交え、食と器の連携の可能性を探りました。
清水琢さん

お昼は、漆器を使ったお花見に参加でした。
漆のお花見

ここからは、会津漆器工房見学3連発!まずは、木地師・石原晋さんの工房で、会津漆器の発明、擦り型ロクロ(鈴木式ロクロ)を見学。出来上がるまで、1分くらいの早技にビックリ!
石原晋さん

塗り師・吉田徹さんによるヘラ作りの実演です。弟子に入ると、最初はこればかりやらされるそうです。ここでも道具づくりの大事さを学びました。
ヘラづくり

蒔絵師・山内泰次さんの工房です。「仕事は手が覚える。職人仕事は一定の量があることが大事」とは、さすが山内さんの含蓄のあるお言葉です。
山内泰次さん

2日目のプログラムはまだまだ終わりません。夜の部は、そもそもの材料である木材(椀木地)の勉強会です。まずは、民族文化映像研究所の記録映像「奥会津の木地師」を鑑賞し、山に住んでいた頃の木地師の営みを勉強しました。この映像、本当に心震えます。何度見てもぐっと来ます。
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続いて、会津漆器にも木材を卸している南会津舘岩、オグラ(木こりの店)の渡部さんから、国産材の現状についてレクチャーいただきました。
漆器にも多く使われてきた栃の木も、最近は希少材に。一時期、全国的に伐採し過ぎたのが一因。今また植林しているけど、以前の状態に戻るには数百年。そうですよね、漆器の作られる時間単位は、そういうことですよね。
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<Day3>
最終日は、NPO法人はるなか漆部会の活動に参加し、ウルシノキの植え付けに汗を流しました。
はるなか漆部会3

無事、新しい漆の苗を65本植え終わりました。漆の液が採れるようになるまで、ここから15年の年月が必要です。
はるなか漆部会2

そして、労働後の青空ご飯タイム。これが最高なんです。
漆ごはん

3日間最後の締めはアカデミーらしく、ここ会津藩校「日新館」にて。次に繋がる振り返りの対話でした。
日新館

こうして、全行程無事終了することができました。全国からご参加いただいた皆さま、会津でご協力いただきました皆さま、本当にありがとうございました!

特に、今回プログラム・ナビゲーターとして、小豆島で生産者と消費者を繋ぐ活動に奔走する真鍋邦大(ポン)さんにご参加いただいたことで、さらに学びの深い時間となりました。ありがとうございました。

参加者の皆さんとの最後の振り返りワークショップはとても濃い時間となり、早速「会津漆器サポーターズ(仮)」というチームも東京を中心に立ち上がり、今後、都内で会津漆器をPRするイベントなどを開催していく運びとなりました。

この機会をきっかけに、今後に繋がるどんな具体的なアクションを起こせるかが本当の勝負。今回ご縁をいただいた皆さんと力を合わせて頑張っていきたいと思います。

案内人について

漆とロック株式会社(Urushi Rocks Inc.)代表
貝沼 航(Wataru Kainuma)

1980年福島市生まれ。大学卒業後に会津若松市に移住。漆器づくりの現場に魅せられ、2013年より、木と漆という自然の素材の魅力や職人さんたちの手仕事の意味を実際に現場で体感できるガイドツアー「テマヒマうつわ旅」を展開。
2015年、世代を超えて受け継ぐことをテーマにした新しい会津漆器「めぐる」を販売開始。同年、グッドデザイン賞とウッドデザイン賞・審査委員長賞を受賞。会津で国産漆の植栽活動に取り組むNPOの副代表も務める。漆と人を繋ぐコミュニケーターとして、漆器の魅力を伝える講演やイベントも行っている。

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